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ウクライナ情勢・4

2022/02/24

一方、情報分野に詳しい自衛隊OBは「状況が急変する可能性は常にあるが、まだ、外交による解決の望みが残っているように見える」と語る。OBはその理由について、「米国もロシアも相変わらず、騒がしいからだ」と語る。

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© Forbes JAPAN 提供

沈黙を警戒せよ 虚実交えた米ロの情報戦争

ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロ派勢力が支配する地域の独立を承認するとともに、ロシア国防省に対し、同地域へ平和維持軍を派遣するよう指示した。これに対し、米国のバイデン大統領はただちに、同地域に経済制裁を科す大統領令に署名した。岸田文雄首相も22日、記者団に「独立の承認など一連のロシアの行為は、ウクライナの主権、領土の一体性これを侵害するものであり、認めることはできません。強く非難いたします」と語り、制裁などの対抗措置を調整する考えを示した。

確かに、今回のウクライナ危機では、米国とロシアが異様なほどの情報戦を繰り広げてきた。まず、米紙ワシントン・ポストが昨年12月3日、米情報機関による報告書の内容として、ロシアが今年早々にも最大17万5000人を動員してウクライナに侵攻する計画を立てていると報じた。ドイツのシュピーゲル誌によれば、米中央情報局(CIA)はロシアが早ければ2月16日にもウクライナに侵攻する可能性があると北大西洋条約機構(NATO)加盟国に伝えた。バイデン大統領は18日、記者団に対して「現時点でプーチン大統領は、侵攻の決定をしたと確信している」と語った。

ロシアはこうした米国の情報戦を「ヒステリー」と非難した。一方で、ロシア国防省は1月下旬、ウクライナ東部との国境に近いロシア西部ロストフ州の演習場に向かうロシア軍戦車部隊などの映像を公開した。今月には同省のホームページやツイッターで、弾道・巡航ミサイル発射訓練を公開した。プーチン大統領による親ロ派勢力が支配するウクライナ東部地域の独立承認や、同地域への部隊派遣指示などもほぼ、リアルタイムで公表している。

自衛隊OBは「本当に侵略するなら、軍派遣の指示などを公表することはあり得ない。一連の動きは、ロシアが国際社会に対して『これからウクライナに入りますが、止めるにはどうしたらいいんですか。どういう条件を出してくれたら下がれるんでしょうね』と聞いているに等しい」と語る。「陸上自衛隊の教範『野外令』にもあるように、奇襲は軍の常識だ。今のロシアの動きは本来の軍事行動とは言えず、欧米に圧力をかけて交渉するための動きと言える」。確かに、ロシア側は22日現在、24日で調整されていた米ロ外相会談をキャンセルする動きは見せていない。

日本のロシア専門家らによれば、プーチン政権は最近、支持率の低落傾向に悩んでいた。軍の強い支持も不可欠だし、最高指導者に就任以来、欧州諸国にやられっぱなしだったNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大に歯止めをかけてレガシーを作りたいという思惑も働いていると言われた。同時に経済は低調で、ウクライナ侵攻による制裁や莫大な戦費の発生による更なる経済悪化は避けたい考えともされた。こうした状況から、わざと危機を作り出して西側諸国に外交的な譲歩を迫る「瀬戸際外交」を行っているようだ。

一方、バイデン政権も昨年8月のアフガニスタンからの撤収を巡る混乱により、外交で失点した。同じ間違いは繰り返したくないが、アフガン撤収を貫いたように、これ以上の海外派兵は避けたい。今月、インド太平洋戦略を発表したように、ウクライナ危機は欧州諸国に任せ、対中国政策に集中したい思惑もある。こうしたことから、積極的に情報戦を仕掛けているようだ。自衛隊OBは「外交で解決したいから、ロシアが危機をつくり出している構図をはっきりさせ、交渉に有利な環境をつくろうとしているのではないか」と語る。

では、世界中の報道機関が伝えている、米ロ発のインテリジェンス情報はどこまで信じて良いのだろうか。自衛隊OBは「内通者などの情報ソースや電波の周波数帯など、情報を獲得する手段が露見するような真似は絶対しない」と語る。米国が「2月16日侵攻説」を唱えたのも、関係者の危機感を高めて交渉の環境を整える意図が強かったのではないかと指摘する。「本当に機密情報を握っていたなら、報道陣に公開せずに、ウクライナに極秘で伝えて対応させるなどの措置を取っただろう」。あるいは、ロシアも米国も外交解決のためには、危機感を高めるのもやむを得ないという判断があったとすれば、ロシア側が敢えて、米国が報道陣に公開することを承知で「2月16日侵攻情報」を流した可能性もあると指摘する。

果たしてロシアは今後、どんな行動を取るのか。日本政府関係者は「バイデン政権がメディアに流す以上の情報を日本にもたらしてくれるかどうか自信がない。米国は常に情報の対価を求めてくるし、日本は欧州諸国に比べ、ウクライナに対してできる手段が限られているからだ。後は、ホワイトハウスとの関係が深いエマニュエル駐日大使を頼るしかないかもしれない」と語る。

自衛隊OBは「もちろん、誤算や誤解もあるから楽観してはいけないが、米国もロシアも騒がしいうちはまだ大丈夫ではないか。両者が突然、沈黙したり、部隊の動きを見せなくなったりしたら、そのときこそ本当の危機が訪れたと覚悟すべきだろう」と語った。

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